ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論を読んだ

ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』を読んだ。

アウトライナーを使った執筆

冒頭に著者4名で執筆方法に関する対談パートがある。そこで皆アウトライナーを使っているのが印象的だった。アウトライナーとは、文字通り文章のアウトライン = 構成を練るためのツールのこと。WorkFlowyを使っている人が多かった。

A simpler way to organize your work - WorkFlowy

イメージとしてはMarkdownのリストを使って文章構成を練るのが近い。じゃあエディタで良いのでは?と思って実際にアウトライナー用アプリを使ってみた。WorkFlowyは月額制なので、cloud-outlinerというアプリを選択した。

‎「Cloud Outliner」をApp Storeで

基本機能はどれも一緒で、アウトライナーを使うと節のタイトル + 概要の文章といった形で文章が書ける。全体の分量を俯瞰で見つつ、章や節を入れ替える機能を持っている。アウトライナーアプリを使うと文章内に図を貼り付けることができる。また、ドラッグ&ドロップで構成を丸ごと入れ替えることもできる。エディタでも可能だが、本などの長文を書くときはアウトライナーの方が良さそうな印象を受けた。

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執筆環境の構築に時間や労力をかけず、とにかく書く。環境や目的と手段が入れ替わらないようにする。先に全体の見通しを立てて細部を埋める。これらはどんな物作りでも必要で、忘れてはいけない心構えだよなー、と思った。ツール選定で満足しても物がなければ意味がないという話。

書くことが職業と結びついている人でも書けないときは書けない

途中、何も書けないときに誰かの「モノマネ」をしてとにかく書く話が出てくる。自分よりも圧倒的に「書いた」量が多い人でもそのようなことをするのだ、と驚いた。完璧でなくても良いから最後まで書き切る。完成させて人の目につくところに公開する話も何回か出てくる。公開することで文章が自分から切り離され、他者になる。それを繰り返して思考を重ねるとのこと。

20歳の自分に受けさせたい文章講義(著者:古賀史健)1 でも「書くために考えるのではなく、考えるために書く」というフレーズが出てくる。思考するために書ききる。書いた後は公開して自分から切り離し、また俯瞰して考える。この繰り返しで思考を深める。言い方が違うだけで本質は一緒だなと思った。

印象に残った文章

千葉 インターフェースが固定・限定化されているというのは、あまり言われないけど大事なんですよね。でもって、ちょうど良くキレイな感じだとなお良い。要するに、キレイな部屋で仕事したい。(p43)

Webアプリケーションの機能にも通じる点があるなと思った。利害関係者の意向で機能を多く実装したものの、実際は一部の機能しか使われていなかった、というケースは良くある。

書き手として立つことは、「自分はいつかすばらしい何かを書く(書ける)はず 」という妄執から覚め、「これは全く満足のいくものではないが、私は今ここでこの文章を最後まで書くのだ」と引き受けるところから始まる。(p137)

叩かれやすいご時世なこともあり「完璧なものを作って出さないと」と考えてしまいがちだが、そんなものは存在しない。作ることもできない。書かないよりは書く。書くよりも書き切って公開する。書くことを繰り返してクオリティを上げる。そのように足掻くしかない。過去の自分と比べて良くなっていれば充分、後の自分にとって役立てばなお良い、くらいの気持ちで取り組みたい。


  1. この『20歳の自分に受けさせたい文章講義』は自分が大学生のときに買って読んだ本で、今でも取ってある。大学生のときは暇さえあれば図書館で新書を読んでいたが、良い経験したな〜と思う。まあ就職活動では目立たないんだが。